【基本】農作物に使われている化学物質

食の安全

現在の日本では、美味しいお米や綺麗な野菜を一年中食べることができます。

それを可能にしたのが、化学物質であるということを知っていますか?

今回は私たちが普段食べているものが出来上がるまでに使われている、見えない化学物質についての基本を説明したいと思います。

肥料

化学肥料が使われる理由

肥料には落ち葉や家畜のふん尿などの自然の材料で作る「有機肥料」とリン鉱石などに化学薬品を反応させて作る「化学肥料」があります。

作物の収穫の後の土に特に不足するのが窒素、リン酸、カリウムです。

すぐに次の作物を育て、たくさん収穫するために、不足する3つの成分を補う必要があります。

そのため、有機肥料に比べて、すぐに効き目があり、安定して安価に手に入る化学肥料がよく使われるのです。

有機肥料のメリット

  • 効果の持続性が高い
  • 銅、亜鉛など、植物の微量必須要素の給源としての効果も期待できる
  • 土壌が改良される

有機肥料のデメリット

  • 効果の即効性が低い
  • 量の調整が難しい
  • 過程でガスが発生したり、においが強かったりする物もあり、扱いが難しい
  • 原材料が自然な物なので大量生産は難しく、価格は高め

化学肥料のメリット

  • 肥料効果の即効性が高い
  • 量の調節がしやすい
  • 微生物の影響を受けず、植物に吸収されやすい
  • 臭いやガスが発生しない
  • 工場で大量生産が可能なため、安定した品質のものが安価に手に入る

化学肥料のデメリット

  • 効果の持続性は低い
  • 微生物が減る
  • 土壌改良効果はない
  • 化学成分によって作物の味を変える可能性がある
  • 人と環境に悪影響を与えやすい

化学肥料の影響

化学肥料の中でも特に窒素肥料は、作物を大きく生長させるので多く使われがちになります。

そして、野菜の多くは肥料中の窒素成分を硝酸態窒素という形で取り込んで生長します。

この硝酸態窒素が人の体内で還元されて亜硝酸態窒素に変わると、メトヘモグロビン血症を発症する原因となったり、ニトロソ化合物という発がん性物質に変化したりする可能性が指摘されています。

また硝酸態窒素は土壌に吸着されにくく、過剰に施肥すると雨や水やりで簡単に地下水や河川水に溶け出てしまいます。

畑から流れ出した硝酸態窒素は湖沼や海などの富栄養化を引き起こし、有毒なアオコなどが大量発生する一因となります。

アオコなどの藻が大量発生すると、酸素を大量に使うため、魚が酸欠状態になって死んでしまう事態となるのです。

殺菌剤

殺菌剤とは

殺菌剤とは、果物などにつくカビや病原菌を殺菌または増殖を抑えるために使われる農薬です。

リンゴやブドウのウドンゴ病やクロホシ病、みかんの貯蔵中に発生する青カビ病などの予防に使われます。

みかんの青カビ病

殺菌剤の開発は1930年代から活発になりました。

有機水銀剤は、稲作に大きな被害を与えていたイモチ病に効いたので、大量に用いられるようになりました。

第二次世界大戦後、日本では堆肥などを肥料にし、雑草は抜いて、必要な時にだけ害虫を駆除するための農薬を使っていました。

戦後、アメリカやヨーロッパから強力な農薬が持ち込まれ、日本の農業は変化していきました。

殺菌剤の影響

殺菌剤を使用する時、直接触れると、皮膚の炎症を引き起こすことがあります。

また誤って吸い込んでしまった場合、胃けいれんや吐き気、汗やよだれが大量に出ることがあります。

田畑のミミズに対しての毒性があったという実験結果があり、魚にも影響があるとされています。

しかし鳥やミツバチへの毒性は低いといわれています。

除草剤

除草剤とは

雑草を枯らして、生えないようにする農薬を除草剤といいます。

接触した全ての植物を枯らす非選択的除草剤と、対象とする植物種を枯らす選択的除草剤に分けられます。

除草剤の影響

除草剤は土にまいて使うため、土の中に住む微生物に影響を与えます。

また土から野菜や果物などの農作物に吸収されてたまることがあります。

世界保健機構(WHO)の専門機関である、国際がん研究期間(IARC)は2015年、ラウンドアップという除草剤の主要成分グリホサートは「発がん性が疑われる」と報告書を出しました。

その後2018年、アメリカで損害賠償訴訟が起こり、それが認められました。

日本の対応として、内閣府食品安全委員会は、グリホサートに関し「発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」などとする評価書を2016年7月にまとめました。

2017年12月には一部の農産物の残留基準値を引き上げています。

正しく使用すれば、人体への影響は低いといわれていますが、除草剤が残った食品を長期間食べ続けることは望ましくありません。

殺虫剤

殺虫剤とは

殺虫剤は農作物の害虫を駆除するための農薬です。

日本では1000以上の商品が登録されています。それぞれの成分によって、効き目のある害虫が違います。

しかし、殺虫剤は外注だけでなく、その他の虫や鳥、魚、人間にも影響があります。

殺虫剤の影響

殺虫剤は毒性が強く、害虫だけでなくミツバチなどの虫や魚にも影響を及ぼします。

また、人が直接あびると呼吸困難などが起こることもあり、中には人に対しての毒性が強く「劇物」に指定されているものもあります。

田畑で使われた殺虫剤が、雨とともに川に流れ込んだり、地下水に染み出したりすることがあります。

流れ込んだ物質が川や海でプランクトンや魚などに取り込まれて蓄積していくものがあることが水生生物調査から明らかになっています。

その魚が鳥や動物に食べられると、食物連鎖によって、化学物質がしだいに濃縮されていく恐れがあります。

ポストハーベスト農薬

ポストハーベスト農薬とは

「ポストハーベスト」とは「とり入れた後」という意味です。

収穫した作物を貯蔵したり輸送したりする間に、品質が落ちないように使う農薬をポストハーベスト農薬といいます。

日本では原則的にポストハーベスト農薬の使用は禁止されています。

ところが、外国の輸入品については、使用されていてもよいことになっています。

輸入品に使われているポストハーベスト農薬は、雨風や日光にさらされることが少ないため、高濃度で残っている可能性があります。

輸入品の安全性

輸入される食品の安全をチェックしているのは、検疫所という機関です。

日本の主要な空港や海港に設けられていて、感染症の流入を防いでいます。

また、輸入食品の審査と検査を行い、基準以上の残留農薬や許可していない添加物が日本に持ち込まれないように監視しているのです。

しかし、輸入品の数はとても多く、実際に全ての検査を行うことはできません。書類チェックだけになってしまっているものもあるのが現状です。

まとめ

私たちは、一年中ほしい野菜が手に入り、それを安く買いたいと考えています。

そのようなニーズに応えるために化学物質が使われているのです。

私たちは食品の安全性について、正しい理解をすることが大切です。

安いから、綺麗だから、便利だから。そんな理由だけで商品を選ぶのではなく、きちんと食品の表示を見て、買うか買わないかを判断しましょう。

参考文献
ラウンドアップでがんに モンサントへ3億ドルの賠償命令 有機農業ニュースクリップ
除草剤「ラウンドアップ」の損賠訴訟について知っていますか
除草剤グリホサートの毒性

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